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怪異・クリーチャー ▰▰▰▱▱

河童

かっぱ

水辺に近づきすぎた者は、足首を掴む冷たい指の感触を、岸に戻ってからも忘れられないという。

川の底から這い上がってきたような存在。「川童(かわわっぱ)」が訛り、「かっぱ」と呼ばれるようになったと伝わるが、その名は土地ごとに姿を変え、九州ではガラッパ、出雲ではカワコ、周防ではエンコウと、八十余りの異称が列島の水辺に染みついている。これほど多くの名を持つ妖怪は、ほかにほとんどない。

頭の皿に水を湛え、亀のような甲羅を背に負い、緑がかった肌を持つ姿が広く知られる。しかし西国の一部では猿に似た面構えをしているとも語られ、奇妙なことに、河童と猿は宿敵同士だという伝承がその同じ土地に残っている。矛盾は解かれぬまま、噂だけが水面を漂い続ける。

河童はもともと水神が零落した姿だ、という仮説が民俗学の世界では根強い。かつて川を守り豊漁をもたらした神が、信仰の衰えとともに畏怖の対象から奇怪な存在へと滑り落ちた——その痕跡が、今も川子大明神(出雲)や水虎様(青森)といった神格の残影に見え隠れする。

礼儀を守れば相撲を挑んでくるだけの悪戯者だが、無礼を働いた者の尻子玉を抜くとも言われる。その行為が何を意味するのか、古い文献は曖昧に濁すばかりだ。溺死体が川から引き上げられるたび、土地の古老たちは静かに目を伏せたという。

現代でも、水辺の事故が続く夏になると、この名は親から子へ、教師から生徒へと小さく囁かれる。戒めのつもりで語られるその言葉が、かえって川面の向こうに何かを呼び寄せているような気がしてならない。

湿った川霧・水底の冷気・零落した神気・夏の夕暮れ 水棲妖怪日本三大妖怪水神零落全国伝承尻子玉民俗学
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この存在が漂う噂

出典: 河童 — ウィキペディア(ja.wikipedia.org)。 当サイトが翻案・再構成。ライセンス CC BY-SA 4.0.