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怪異・クリーチャー ▰▰▱▱▱

座敷童子

ざしきわらし

その家に子供の笑い声が聞こえるとき、それは繁栄の予兆か、あるいは別れの前触れか。

岩手の古い屋敷の奥座敷や蔵の暗がりに、ひっそりと居着く幼い影。赤みを帯びた顔、おかっぱ頭、五、六歳ほどの小童として語られることが多いが、その年恰好も装いも、住み着く家によって微妙に異なるという。男の子ならば絣の着物、女の子ならば赤いちゃんちゃんこ——しかし薄暗がりの中でははっきりとした姿を結ばず、性別すら定かでないと証言する者も少なくない。

夜更け、灰の上に小さな足跡が刻まれている。隣室から糸車の回る音、紙のかさかさという音、微かな鼻息——板戸を引けば、そこには誰もいない。客の布団に何者かが乗り上げ、枕を裏返す。押さえようとすると、幼子とは思えぬほどの力で抵抗するとも伝わる。悪戯好きではあるが、そこに害意の気配はなく、むしろ家の者は追い払うことをしなかった。

柳田國男の『遠野物語』はこの存在を「この神の宿りたまふ家は富貴自在なり」と記している。座敷童子が居着く家は栄え、去った家は衰退する——これが最も根深い信仰の核心である。ある旧家では、子供が弓矢で童子を射たところ、その夜を境に家運が傾いたという。童子が去ることは、ただの別れではなく、終わりの始まりとして恐れられた。

注意すべきは「赤」の意味の二重性である。赤い顔の童子は普段の姿として語られるが、赤い着物、赤い手桶を持った童子が鮮明に目に映ったとき——それは童子が家を離れる凶兆とされる。実際、赤い童子を目撃した家族が全員、食中毒で命を落とした記録が残されている。見えることが必ずしも幸運とは限らない。

現代においても、岩手県内のいくつかの宿では「座敷童子に会える」と噂され、訪れた者が説明のつかない気配や、子供の足音を聞いたと語り継ぐ。その家が今も栄えているうちは、おそらく童子はまだそこにいる。静かに、見えないところで。

懐かしさと不安、静謐、家鳴り、福と凶の紙一重 岩手県遠野妖怪福の神守護霊柳田國男遠野物語座敷
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出典: 座敷童子 — ウィキペディア(ja.wikipedia.org)。 当サイトが翻案・再構成。ライセンス CC BY-SA 4.0.