甲府事件
こうふじけん
ブドウ畑の闇に降り立ったものは、七年後もまだそこにいたという。
1975年2月23日の夕暮れ、山梨県甲府市。帰り道を急いでいた小学二年生の男児二人が、橙色に燃えるような飛行物体に追われたと証言した。二人は近くの墓地に身を潜めて難を逃れようとしたが、物体はほどなくブドウ畑へと降下したとされる。
そこに現れたという存在の描写は奇妙なほど一貫している――チョコレート色の肌、深く刻まれた皺、のっぺらぼうのような顔。その何者かが、少年Aの肩を背後からそっと叩いたという。恐怖で動けなくなったAを背負い、少年Bが家族を呼びに駆けた。大人たちが駆けつけた頃には搭乗者の姿は消え、ブドウ畑には燃えるような残光だけが揺れていたとされる。母親の声は録音され、後にテレビで流れた。
現場調査では不審な痕跡が報告されている。コンクリート柱三本の倒壊、金網の異様な変形、地面に刻まれた轍のような複数の穴。一部の報道によれば、着陸推定地点から半減期の短い人工的放射能が検出されたとも言われる。しかし周囲の樹木に傷は一切なく、目撃された円盤の大きさでは柱の間を通過することは物理的に不可能との指摘もあり、謎は深まるばかりだとされる。
事件から七年後の1982年、現場付近を車で走行していた女性が、あの夜の搭乗者に似た人物と遭遇したと語った。時間を超えて繰り返される目撃談は、この事件に奇妙な連続性を与えている。
当事者の少年の一人は長年にわたり取材を受けたが、やがて自らの体験を語ることをやめた。信じる者がいる一方で、一家ぐるみの作り話と疑う声もあったためだとされる。2025年2月23日、事件はちょうど五十年目を迎えた。
あの夕暮れのブドウ畑に降り立ったものは、果たして何であったのか。そして七年後に再び現れたとされる存在は、同じものだったのか――その問いに、今も答えは出ていない。
場所
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出典: 甲府事件 — ウィキペディア(ja.wikipedia.org)。 当サイトが翻案・再構成。ライセンス CC BY-SA 4.0.