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地域・名所 ▰▰▰▱▱

恐山

おそれざん

硫黄の煙が晴れた朝、湖畔に見知らぬ足跡だけが残っていた。

青森の果て、下北半島の奥深くに横たわる火口の盆地。宇曽利山湖はその中心に据わり、底から絶えず硫化水素を吐き出して水を青白く澄ませている。草も木もまばらに枯れ、鳥すら寄りつかぬ荒野——古人がそこに地獄の入口を見出したのは、理屈ではなく皮膚感覚だったのだろう。

平安の世にはすでに「宇曽利山」の名で記録があり、奥州安倍氏ゆかりの地として知られていた。やがて「うそり」という音は「おそれ」へと滑り落ち、今の名が定着した。音の変化そのものが、この場所への畏れを映しているかのようだ。

霊場の地面に積まれた無数の石塔は、亡き者への供養であると同時に、地中から漏れ出す毒気を散らす働きも担っているという。風車がくるくると回り続けるのも同じ理由だ。祈りと実用が分かちがたく絡み合う——ここではそれが自然なことに映る。

年に一度のイタコの口寄せには、遠方から死者の声を聞きに人々が集まる。湖面に硫黄の靄がたなびく境内で、生者と死者の境はひどく曖昧になる。温泉が湧き、人々が肌を浸す横で、霊たちもまた同じ湯に漂っているのだと、古くからの噂は語り継がれている。

火山としての最後の噴火は一万年以上前とされるが、地中は今も静かに息をしている。気象庁の監視対象に登録されているこの山は、眠っているのではなく、ただ待っているだけなのかもしれない。

硫黄・白煙・静寂・彼岸・積み石・湖の青 霊場火山青森死者イタコ地獄日本三大霊場宇曽利山湖
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出典: 恐山 — ウィキペディア(ja.wikipedia.org)。 当サイトが翻案・再構成。ライセンス CC BY-SA 4.0.