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怪異・クリーチャー ▰▰▰▰▱

牛鬼

うしおに

淵の水が濁るとき、それはもう、そこにいる。

西日本の海岸線や山間の淵に古くから棲むとされる大妖。牛の頭に鬼の胴体、あるいはその逆、あるいは蜘蛛の脚が八本——目撃した者の数だけ姿が異なるというのは、この怪異が「見られた形」をそのまま纏うからだという噂もある。

毒を吐き、人を食らい、近づくだけで病を与える。和歌山の古い淵では、影を舐められた者が数日のうちに高熱で死んだと伝わる。その気配は音がない——猫のように柔らかい体が、足音すら消すのだという。

三重の南伊勢では、洞穴に潜む牛鬼を射た城主の一族が、祟りによって滅んだ。傷つけることは殺すことより危うい。牛鬼の恨みは、本人ではなく最も近しい者へと向かう。

しかし稀に、この怪異が人を救ったという記録も残る。和歌山の三尾川では、牛鬼が女の姿を借りて人と言葉を交わし、のちに大水で溺れたその人間を救い出した。掟により、救った瞬間に真紅の血を流しながら溶けて消えたという——慈悲が死に等しい存在の、奇妙な矜持。

近畿・四国には今も「牛鬼淵」「牛鬼滝」という地名が点在する。名が残る場所には、まだ何かが沈んでいると、地元の古老は口を閉ざしたまま淵の方角を見る。

湿った岩の匂い・静水・遠い咆哮・腐臭の霧 妖怪西日本海岸祟り変化
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この存在が漂う噂

出典: 牛鬼 — ウィキペディア(ja.wikipedia.org)。 当サイトが翻案・再構成。ライセンス CC BY-SA 4.0.