UMA・未確認生物 ▰▰▱▱▱

芦ノ湖の九頭龍

あしのこのくずりゅう

湖面が凪いだ夜、水底から何かが――ではなく、何かが還ってくる、とされる。

神奈川県箱根町に横たわる芦ノ湖は、およそ三千年前、神山の大崩壊によって生まれたカルデラ湖である。火砕流が川を堰き止めてできたその水域は、底なしの湧き水を水源とし、どこまでが湖でどこからが山の腹なのか、今も判然としないとされる。

奈良時代の記録によれば、この湖にはかつて九つの頭を持つ龍が棲み、人々を苦しめていたという。757年、修験者・万巻上人が調伏を行い、以来その霊は守護神として九頭龍神社に祀られることになったとされる――が、「封じた」のか「祀ることで宥めた」のか、伝承は微妙に曖昧なままである。

湖の水利権は、江戸時代に掘られたトンネル「深良用水」の経緯から、今も静岡県側にあるとされる。つまりこの湖は、神奈川県の地図の上に存在しながら、その水は別の県の管轄に属するという、地図では説明しきれない二重性を持つ。九頭龍の「どちらにも完全には属さない」性質と、奇妙に重なると語る者もいる。

現代においても、湖面に巨大な影が映った、水面に見慣れない波紋が広がった、という目撃談が散発的に伝わるとされる。観光船の乗員が「深い霧の中で何かに近づいた気がした」と語ったという話も、真偽不明のまま湖畔の噂に混じっている。

九頭龍が調伏されたのか、それとも今も水底の何処かで息づいているのか――湖面はいつも静かで、何も答えない。

静謐・古層・境界・封印の曖昧さ UMA龍神カルデラ湖九頭龍箱根芦ノ湖水中存在神奈川県
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出典: 芦ノ湖 — ウィキペディア(ja.wikipedia.org)。 当サイトが翻案・再構成。ライセンス CC BY-SA 4.0.