
怪異・クリーチャー JP ▰▰▱▱▱
轆轤首
ろくろくび
朝になっても首の周りに残る、薄い筋の跡——それが何を意味するか、問うてはならない。
昼間はどこにでもいる人間と見分けがつかない。顔の造りも、声の調子も、歩き方さえも。だが夜が深まり、周囲の気配が凪いだころ、その首は静かに胴を離れる。
大きく二つの型が囁かれている。一方は首だけが宙へ抜け出て夜気の中を漂う「抜け首」。もう一方は首そのものが蛇のように伸び続ける型だ。いずれが古い形かと問われれば、古典の怪談師たちは口を揃えて「抜け首こそ原型」と答える。
抜け首を離魂の病と解く者もいる。眠る女の魂が首の形を借りて夜道をさまよい、夜明けとともに胴へ戻る——ただし、眠っている間に本体を別の場所へ移されると、首は帰る場所を失うという。江戸の随筆『北窻瑣談』は寛政元年の越前での目撃を記録し、「首が実際に離れるわけではなく、魂が首の形を成しているのだ」と冷静に注釈した。
首に一文字の梵字が記されているとも伝わる。その文字が何を封じているのか、あるいは何を呼び寄せているのか、書き残した者はいない。
「ろくろ」という名の由来は陶工の轆轤、井戸の滑車、傘の仕掛けなど諸説あるが、どれも「伸びる・回る・引き上げられる」という動きを指している。名そのものが、あの奇妙な動きの記憶を宿しているかのようだ。
今もこの噂は消えない。宿の女将が翌朝、首筋に細い筋を残していたという話。夢の中で刀を持った男に追われたと語る女の話。語る者は笑い飛ばすが、その目が少しだけ宙を泳ぐのを、聞いた者は見逃さない。
静謐な恐怖、夜の離脱感、日常に潜む異形 妖怪日本抜け首離魂江戸怪談首夜の存在
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見る 出典: ろくろ首 — ウィキペディア(ja.wikipedia.org)。 当サイトが翻案・再構成。ライセンス CC BY-SA 4.0.