京都の夜。古くから伝えられる都市伝説は、この土地に深く根付いている。それは、鴨川沿いの柳の木々が囁く夏の夜の話だ。
夏の夜、蒸し暑さが残る京都の街中を、若い女性の加奈は歩いていた。彼女は仕事帰りで、鴨川沿いの道を通って帰宅するのが日課だった。川辺の柳が風に揺れ、草木の香りが漂っている。だが、その夜はいつもと違っていた。
川沿いの道を歩いていると、遠くの方から子供の笑い声が聞こえた。最初は微笑ましいものだと思っていたが、笑い声は次第に不気味な響きを帯びてきた。誰もいないはずの川岸に、笑い声とともに浮かび上がる人影があった。加奈は立ち止まり、目を凝らした。
そこには、古い和服をまとった子供たちが、楽しそうに遊んでいる姿が見えた。だが、よく見るとその顔は、異常に青白く、目には黒い影が宿っていた。加奈の心臓は激しく鼓動し始めた。この子供たちは、一体何者なのか。
急に背後から冷たい風が吹き、加奈は振り向いた。その瞬間、柳の木々の間から、異形の影が現れた。それは、長い髪を持つ女の姿をしていたが、その顔は決して人間のものではなかった。彼女の目は鋭く、口元には微笑が浮かんでいる。
「何を見ているの?」と、その女は囁いた。その声は、静かでありながらも恐ろしい力を秘めていた。加奈の身体は凍りつき、声が出ない。背筋を冷たい汗が流れ落ちる。
必死に逃げ出そうとする彼女を、女と子供たちの影が追いかけてくる。加奈は走り続けた。息が切れ、目の前が霞んできた。やがて、彼女は疲れ果て、道端に崩れ落ちた。
翌朝、通行人によって発見された加奈は、何も覚えていなかった。ただ、その顔には、夜の恐怖が刻まれているようだった。鴨川沿いの妖怪たちは、彼女の記憶から消え去ることなく、京都の都市伝説として語り継がれていくのだろう。
京の都には、今もなお古の妖の声が響き渡っている。