Cryptid ▰▰▱▱▱

十和田湖の深淵に潜むもの

とわだこのしんえんにひそむもの

水深三百二十六メートルの闇は、いまだ底を見せない。

青森と秋田の県境に横たわる十和田湖は、遠い太古の噴火によって大地が陥没し生まれたカルデラ湖である。二重の火口が重なり合う構造は、湖底に人の知らぬ空洞を抱えているとも囁かれ、その最大水深は日本第三位を誇る。観光地として名高い湖面の青さは、しかし深部の様相を一切映さない。

古くから十和田湖には「主(ぬし)」の伝承が根付いている。平安の昔、南祖坊という修験者がこの地で龍神と戦い、敗れて湖の主となったとも、逆に龍を打ち破って自らが龍体に変じたとも語られる。いずれが真であれ、湖には人ならざる意志を持つ何かが宿るという感覚は、時代を超えて地元に受け継がれてきた。

近代以降も、湖面を漂う正体不明の巨大な影や、霧の朝に水面を走る長大な波紋を目撃したとされる報告が散発的に伝わっている。奥入瀬川を唯一の出口とするこの閉ざされた水域には、外海の生物が紛れ込む余地はないはずだが、それでも「大きすぎる何か」を見たという証言は絶えないとされる。

十和田火山は現在も防災当局の監視対象であり、湖底には地熱活動の痕跡が確認されている。水温の異常な上昇や、湖底から立ち上る気泡の列が観測される区域があるとも報告されており、生物起源か地質起源かは判然としない。暗く熱い湖底の環境が、未知の生態系を育んでいる可能性を指摘する研究者もいるという。

三百メートルを超える水柱の下に何が息づいているのか、現代の調査技術をもってしても十和田湖の全貌は解明されていない。湖は今日も静かに青く、問いに答えることなく、ただ深く沈黙し続けている。

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Kaidan The Codex The things behind the rumors, at a glance.
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Source: 十和田湖 — Wikipedia (ja.wikipedia.org). Adapted and reconstructed by this site. License CC BY-SA 4.0.